ベネルックス三国の旅 top に戻る

街並み
 アムステルダム
ブルージュ
 


  「石造りの文化」と「木造の文化」はどちらも美しい。ヨーロッパの大聖堂や市庁舎と日本の神社や寺のような大掛かりな建物を見くらべるとまったく別次元のように見えるが、人々が暮らす住宅や商家の家並みでは共通点があり、共通する美しさがあるように思える。使っている材質も色もまったく違うのに、である。
旧中山道 妻籠宿  「ゆっくり・きょろきょろ旧中山道を歩く」
北国街道 小諸宿-田中宿  「ゆっくり・きょろきょろ北国街道を歩く」

 しかし、世紀を越えて耐えられる石造りとせいぜい100年間で朽ちてしまう木とでは、当然大きな違いがある。17世紀のオランダ・フランドル絵画に描かれた世界が、殆どそのまま、あるいは濃厚にそのスタイルを持ったまま現在に至っているのに対して、同じ17世紀のころの京や江戸の街並みは、今や山の中の旧街道にその面影を多少残すだけである。(「栄光の17世紀・絵画」 参照)

 驚くべきは、電柱がないだけではない。現代の新しい町にも階段状の屋根やそのデザインを活かした家並みがごく当たり前にあることである。そして、観光には縁のない地域であっても、家並みには秩序と調和があり、突拍子もない高層の建物や、奇抜な色やデザインの建物はないのである。もちろん、巨大広告やどぎつい色の自動販売機など、あるはずもない。昔から教会の尖塔を上回る高さの建物は禁じられていたと聞いている。たしかに、尖塔のある地方都市でそれ以上の高さの建物は見当たらないし、丘陵地帯の高速道路を走っていて出現してくる小さな村や町には必ず尖塔があって、その周囲に美しい赤瓦の家並みが並んでいる。今も何らかの規制があるのか、それとも、住民や建築家にとって常識的なことなのか。

 すなわち、石造りの文化は、建物の外観や構造が長持ちするだけでなく、住む人たちの精神構造さえも旧来の良き伝統を維持するようにできているに違いない。もちろん、外観を変えずに家の中は現代の生活に合うよう、快適に暮らせるよう変えていると聞く。古びたビルでも、たしかに、中はモダンである。しかし例えば、ヨーロッパでは、衛星放送以外では、いまだに高画質(高密度・ハイビジョン)テレビは放送していないか、あるいは普及していないと聞いた気がする。今回の旅では、どこのホテルの部屋でも、ブラウン管式か液晶でもスタンダード画質のテレビであった。価値観にも、石と木の文化の違いが影響しているように思える。


  

アムステルダムの美しいビル街であるが、今、深刻な問題を抱えている。左の写真(上)の中央に並ぶ3軒のビルがゆがんでいるのが分かる。カメラのレンズのひずみによるものではなく、実際に傾いているのである。下の写真の中央右のビルも同様に傾いている。

 アムステルダムはご多分にもれず低湿地帯にあり、下地は砂であるという。しかし、木材の杭を打ちこんで基礎としていて今まで問題はなかった。オランダでは500年間も地震がないから、レンガの補強にも鉄筋コンクリートを使っていないそうだ。ところが最近、このように建物が傾く事故が頻発して、訴訟問題になっているという。崩壊寸前で使用停止になっているビルもあると聞く。

 原因の一つは、アムステルダムで2番目の路線として現在工事中の地下鉄建設にあるらしい。地下水をくみ上げるなどで地盤変動が起こり、木製の杭も腐り始めているという。

 もう一つの不安は地震である。最近、地震が発生しているというのである。その原因は、なんと天然ガスの採掘による地盤変動といわれている。そもそも、オランダで天然ガスが採れるということすら知らなかったのだが、1964年に北部で発見されて、今や世界で第6位の産出国となり、3分の一を輸出している地下資源大国なのである。そのために地震が発生するようになったという。同様の現象が、地震のなかったアメリカ中部でも起きていると最近聞いたことがあるからあり得ることなのだろう。

 こうした問題をなんとか解決して、美しい街並みを永く残してほしいものである。

 
 
  
  
  
ブルージュ 
 
 アントワープ モダンだが伝統の形が生きている 
 ブルージュ 
  ブルージュ   
ブリュッセル。 この町はフランスの色彩が濃厚である このビル群もパリそのものである。 
ナポレオン3世の都市計画によって、パリの大通りでは、このオスマニアン様式が並んでいる
デュルビュイ  中世がそのまま残っている小さな町である 
 マーストリヒト
 
マーストリヒト
 
マーストリヒト
 
マーストリヒト
 
アペルドールン ごく普通の住宅街  シャッターや雨戸がなく、美しい室内を通りに見せているのが印象的 
 
ブルージュ近くの小都市 ここもごく普通の住宅街
 
メンデルブリックの住宅街
 
メンデルブリックの住宅街 
 
デルフト フェルメールの「小路」の舞台はこの近くといわれている
   
 
 デルフト 市庁舎の前にチーズ店などが並んでいる
 

  ベネルックス三国の旅 top に戻る