穏やかな国
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旅行中に「非常事態宣言」が発布されたとのニュースが伝わって来た。何が起きるのか、旅行を続けられるのか、と戸惑いを感じた。ホテルに帰ると、ドアの下からメッセージが差し込まれていた。我々の手配をしてくれた現地の日系の旅行社からのものである。滅多にないことだろうから、記念に、そのコピーを残しておく(PDFファイル)。在タイ日本大使館のホームページを開いてみると、「注意せよ」というだけで、「帰れ」とか、「来るな」とは書いてない。
案内してくれた在タイ25年の彼は、道路が混雑するだけで、他に何の心配もない、という。反政府派がメイン道路を封鎖して、ステージを作って演説したり、デモ行進をするので、周辺の道路が大渋滞を起こしているだけであるというのである。夕食時に、その「会場」近くに行ってみた。たしかに、封鎖した道路には露店が、祭りの夜店のように並んでいる。デモの先頭のトラックでは、車上で調子のよい歌を歌っているし、沿道からは拍手と声援が飛んでいる。
それだけなのだ。露店がぎっしり並ぶ歩道は、いつもより人が少ないというが、とても賑やかである。そもそも、今回の騒動は、都会と地方との争いともいわれるが、バンコク市民の多くはデモを支持しているのだそうだ。集まったメンバーも、乱暴なことはしないという自制と、ある種の自尊心を持っているようだ。繁華街を歩いていて、世界から集まる観光客で混雑していて、日本語も聞こえてくる。「これが、非常事態宣言が出ている国とは思えないなあ」と云っている。まったく、その通りである。
タイでは町も、田舎も穏やかである。自然もそうだし、この国の人は実に穏やかなのだ。 |
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