奥州街道の野仏たち
 宇都宮から白河に向かう途中の旧奥州道中でも書いたが、この街道沿いに目立つのは月待塔である。比較的近年になってから集められたと思われる石仏群にもかなりの数がある。特に二十三夜塔が多いようである。月待塔とは、それぞれの月齢のときに集まって飲食し、経を唱えて月を拝むという講の記念塔である。やはりこの街道沿いにも多い庚申塔は人体に宿る三匹の虫(三尸)が庚申の日に抜け出して天帝に宿主の罪業を報告するのを抑えるために、仲間と寝ずに勤行を行う講を3年18回続けた記念としての碑が庚申塔である。いずれも、もともとは大陸から来て平安貴族の遊び的な存在だったものが、庶民の民間信仰に変遷したものという。その他の甲子講なども同様に仲間と寝ずに飲み明かす講であり60日ごとに行われた。月待塔は周期が短くて頻繁に集まる講だから、酒好きの多い奥州では「60日も待てない」、と月待信仰を選んだのだろうか。

   
 ほとんどが馬頭観音だが、二十三夜塔が一基ある  ここもほとんど馬頭観音である
   
 中央は子安観音  筑後塚供養塔群
 
多くの野仏に出会うが、一見しただけでは見分けられない石像も多く、旅を終えて、書物等で調べた。しかし、風化が激しい石仏や初めて出会うものなど、判別できないがある。さらに調べるために、もっとしっかり写真を撮っておくべきであったと反省している。
   
   
二十三夜塔  六地蔵
   
 筑後塚(須賀川市)の 
双式浮彫阿弥陀三尊来迎供養塔
これも来迎供養塔のようだ。地蔵の二体彫りや双体道祖神ではないだろう
   
 刻まれた種子は梵字の「アーンク」で
胎蔵界大日如来を意味しているようだ
 青面金剛と三猿の彫られた典型的な庚申塔
   
 これは庚申塔だろうか  右奥に「大黒天」と書かれた甲子塔がある
 
<参考文献>
 ・外山晴彦他:野仏の見方、小学館(2003年)
 ・日本石仏協会:石仏探訪必携ハンドブック、青娥書房(2011年)
 ・池田久吉:路傍の石仏、第一法規出版(1971年)