旅日記-わが青春の1ページその2  北海道一周 第14日   札幌・夜行で函館へ  


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1960年(昭和35年)8月7日(日)   晴         ooh
                                     今日の地図

ここの朝は意外に静かだった。 6時頃目を覚ますとミンミンゼミの鳴き声の外は時々廊下を人の通る音が聞えるだけだ。 前夜の酒宴のための静けさなのだろうか。 この部屋に一人で泊まったなら--即ち他の三人が側にいなかったら--もうすこしロマンチックになれたかも知れない。 7時前女中さんが起こしに来た。 7時過ぎ朝食。 なかなか豊富だ。 新聞も各部屋に配られる。 読売を読んだ。 3階のこの部屋から道行く人を見下ろすのはいい。 話し声は聞えぬが動作は分かる。 今日は全てのものが落着いて見える。 
 やがて出発。 昨夜から気になっていたことだが、出発直前、金の方のことを聞く。 4人で五千円ちょっとだそうだ。部屋代等は大体予想通りだ。 それに女中さんにチップを初めて出す。 それも向こうから言われてだ。 5千円程かかると聞いたとき多少虫のいいことを考えてもいたので皆一瞬声なし。 しかし、これがあたり前であるはずだ。 旅館に泊まって、しかもあれだけのもてなしだ。 あの気分だ。 ともかく8時26分発の豊平行き急行に乗る。 ここの車窓ではあまりいい景色は見られない。 
 9時豊平着。 案内書で月寒へのバスについて問う。 親切だ。 パンフレット3種を袋に入れてくれる。 デンワで問い合わせてくれる。 羊ヶ丘展望台へ行く。 羊がいない。 今日は羊も日曜日だそうだ。 仕方なく3人の変な男を羊に仕立てて写真をとる。 すぐ来たバスで引き返す。 札幌駅着。 荷物を預けて北大へ。 皆グロッキー。 ポプラ並木を見て写真。 その後芝草の上で2時間・・・・する。 
(・・・・は人によりまちまち。 僕は寝ていたので知らない)  クラーク先生の像の前で写真をとり、北大とさらば。 続いてヒヤ麦と冷やしラーメン五十円也の昼食--テレビ塔へ。 高いところへ行くのは歩いてもエレベーターでも五十円だそうでタンマ。 
 今晩十時までの時間のつぶし方を考えた結果、無料の映画を見ることにする。 その入場券だが、招待券をもらいに行くがもうないそうだ。 それでも食事を済ませたら行って見ることにする。 食事はイナリ寿司とイチゴの氷で70円也。 ここで、医科歯科大のTさんと会った。 全く偶然だ。 食事を済ませてゆっくり映画会場に。 エレベーターで6階まで昇り、皆券がないのでもじもじ。 ”どうぞ、どうぞ” ”あの、僕達券が・・・・” ”いやかまわないですどうぞ、どうぞ” とにかくフリーパス。 映画は始まっていた。
 PR映画の会なのだが、それも眠らないで見る。 その後「鉄道員」。 列車の席を確保するため前の駅である江別まで行くことにしたが、映画の方が良いのでやめにする。 映画終了。 時計台の前を通って駅へ。 札幌は歩行者優先だ。 車が実に良く止まる。 人間も心得たもので車の前をこれまた実に悠々と歩く。 札幌は商工祭りか夏祭りで賑やかだ。 浴衣を着た女性が多い。 美しい人も多い。 
 月が出ている。 まるい、大きな月だ。 雲が三つ、本当に三つだけ出ている。 やがて駅に着いた。 北海道最後の夜は車中だ。 升谷、水島の活躍で座って行ける。 明朝は函館だ。 空にはさっきの月と雲がある。 

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