旅日記-わが青春の1ページその2 北海道一周 第9日  阿寒湖・網走  

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    1960年(昭和35年)8月2日(火)    曇のち晴のち曇のち雨のち曇(のち晴の予定)      masu
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きのうの疲れで目をさましたのは6時半〜7時。 障子を開けると朝もやに包まれた阿寒湖が見える。 洗面所ではdateにそなえて昨夜買った50円也のポマードをぬりつけている。 8時すこし前荷物をかついで雄岳荘を出る。 雄岳荘はバスの阿寒駅のあるにぎやかな町からすこし離れたところにあって、流行歌のスピーカーもここでは聞えない。
 遊覧船の乗降場から再びボッケへと足を向ける。 今度は我々のほか例の6人のうち2人が一緒。<オレはつまんない> <この間映倫でカット>夕べ月明かりでみたボッケはなんとなくうす気味悪く(神秘的?)感じられたが明るいところで見ると別にたいしたものではない。 たしかにボッケそのものは興味あるものだが。
 駅まで戻り帯広行きバスを送ると<タイミングの良さを語り合う奴。お礼に気をよくしている奴。ここでも僕は聞かされる役>二階の待合室によって、まだぬけきれぬ昨日の疲れを直す。
いままでいろいろな人から阿寒について聞いた。 なかにはつまらぬと言う人もいたけれど、たいていの人は素晴しい、素晴しい、といっていた。 街を見てよいと思った人もいるかもしれない。 ボートや遊覧船でマリモを見て喜んだ人もいるだろう。 また、アイヌが熊を彫るのを見て感心したのかもしれない。 <女の子をおいかけまわしているのもいるにちがいない> 我々はボッケ以外どこも見なかった。 山にも登らなかった。 だから、ここが期待はずれだったといっても勝手すぎるかもしれない。 でも、もうすこし静かなところであってほしかった。 今度いつかまた来る機会があったら山に登り、<また渚に立って>原始林に寄せる波を見つめよう。
 バスガイドの話によれば、エゾ松、トド松について我々は認識を誤っていたようである。 枝が下を向いて肌が荒れているのがエゾ松。 枝が上を向いて肌のなめらかなのがトド松である。 途中の釧北峠から見た阿寒湖は静かだった。 ここからの阿寒湖を説明するときに、マリモやアイヌは不要である。 それにしてもきのうのバンケトー、ペンケトーは良かった。 深い山奥のイメージにぴったりくる様だ。 
 北見相生の町はやはり色に乏しくくたびれた町だ。 いままで見てきた北海道のまちはどこも灰色に汚れた木の屋根と壁を持つ質素な家ばかりで、絵はがきに出てくるハイカラな北欧風の建物はあまり見当たらない。 海岸で昆布を干す人達といい、湿地帯でわずかな耕地を耕す人達といい、それにあののどかなサイロといい、みな北海道のきびしさと戦っている現実なのだ。
 相生から美幌まではこれまた変わったガソリンカー。 北海道に来ていろいろな乗り物に乗れるので楽しい。 車窓からは久しぶりに水田も見える。 松も見える。 トド松、エゾ松ともちがうので”カラ松”と命名する。 ここで水島午睡。 ここの列車は駅と駅との間にある開拓村の”停留所”にも止まる。 
 美幌に着いたのは2時近く。 早速腹ごしらえに街を歩く。 大衆食堂とやらをみつけてねばること約1時間。 ファイトをもやすという弁解で一人二食ずつ食べてしまう。 <升谷と大原と水島はそれでも足らないといった顔をしている><服部ははっきり足りないと言う> このころより空はくもり雨がこぼれだす。水島は隣りのパチンコへ煙草を仕入れるべく出張。 見事に失敗。 これぞ健全なレクリェーションだとか。 すっかり雨はどしゃぶりになって駅までのわずかなみちをいっ気に走る。 店の前で立っていたら番がさを貸してくれて、それでゆうゆうと来る<ずうずうしい>奴もいた。 
 美幌から網走までは一時間もかからない。 服部と大原は最後尾の一等車に乗りたくてデッキでうずうずしている。 網走近くになると左には小雨にけぶる網走湖が見えてきた。 大沼公園の小沼に似て広いが静かである。 網走に着いたのは4時10分ごろ。 反対側のホームにはサロマ行きの列車がとまっている。 改札口を出て例によって宿屋の番頭はんが盛んに客引きをやっている。 弟子屈ではとても感じが悪かったので、またかと思ったが安い宿を紹介してくれた。 番頭はん同士が互いに協力し合っているのを見て水島はすっかり感心して曰く”商売はこうじゃなくちゃいけない”。 
 案内されたのは我々四人と関西人らしき女子学生二人、それに一人の婦人(学生じゃないだろう)。 さいはての網走で、さいはての旅館、通された部屋もさいはての一室。 網走は今日丁度花火大会があるとのこと。 雨がふったりやんだりなのでどうなることか。
 外を鈴をつけた馬車が通っている。 自動車も通っている。 花火は中止。 雨がまた降り出した。
 つかれて、ねむい。 おやすみなさい
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