旅日記-わが青春の1ページトップへ戻る 北海道のトップへ 前日に戻る 次の日へ
1960年(昭和35年)8月1日(月) 快晴 hat |
今日の地図 きょうは全くすばらしい一日だった。 朝5時、一番列車に乗る人達の訪れで目をさます。 夕べ同じ屋根の下に寝たのが全部で10人程。 理由は皆同じだろう。 アクビとクシャミの連続。 Station Hotel に別れるのがおしいので寝姿を写真にとる。 天気は快晴。 きょう行く摩周湖もはれている可能性大なり。 洗面所がないので列車に乗ってから顔を洗う。 発車のとき助役さんにお礼をいうと敬礼してくれた。 6時5分弟子屈発の一番列車で川湯へ。 この列車、北海道に来てはじめてのストーブ列車。 といっても今はストーブをおいていない。 痕跡あるのみ。 30分ほどで川湯駅。 駅長さんに付近のことを聞く。 駅前食堂で朝食。 サービスがいい。 親切だ。 「もし泊まる所がなかったら家でも泊めてやる」といってくれる。 お礼に昼メシ用のパンを買う。 8時。 徒歩で硫黄山に向う。 白樺の林が美しい。 幹の白さがうそのようだ。 10分程でお花畑と称する所--硫黄山のフモトで、バスの駐車場。 エゾイソツツジがいつかは花を開くことだろう。 硫黄山に登る。 くずれやすい急斜面をリュックをしょってはい上る。 右手のまっきいろの硫黄の噴火口から亜硫酸ガスがふき出し鼻をつまらせる。 こわくなって、途中で荷物をおろしてのぼる。 落石を注意して四人が平行に並んで行く。 不毛地帯をすぎて20分で頂上。 ハエマツの潅木林が美しい。 わずか500mぐらいの山でハエイマツが見られるとは思わなかった。 マツの林から顔だけ出して写真をとる。 9時20分、バスで摩周湖に向かう。 摩周観光道路---2000mの直線道路を通って急カーブの山道を行く。 トド松、エゾ松の樹林地帯、その中にまじってダケカンバのまがりくねった姿が北海道の気候のきびしさに耐えてきた努力を忍ばせる。 10時頃摩周湖第三展望台につく。 ウワサにたがわず、すっかり霧におおわれて湖は見えない。 わずかに見えるサザナミに満足してバスにひっかえす人、腹をたてて霧を一生懸命吹き飛ばそうとする人、そうしたスーツケース組を残してわれわれは第一展望台へと尾根ずたいに歩く。 わいわいいいながら5分ぐらい歩いて見晴しのきくところに出たとたん、今まで静かに立ちこめていた霧がにわかに動き、うずをまき、それがいくつか集まって、急速に上昇して消えて行く。 そして光線が水面にとどくと、鉛色の水がたちまち濃いブルーに変わって行く。 美しい!草木の緑と霧と陽の光、それがいっしょに水にとけて、一層青さを増している。 しだいに対岸の摩周岳も見えて来る。 カムイヌプリという名のひびきがぴったりの山だ。 カムイシュ島も見える。 この奇跡といえる展望に四人はただだまって湖をみつめるだけだった。 実際、この水にとけこんでしまいたい気にもなる。 「ここで死んでもよい」 「いや、この感激を誰にも話さないでは<誰にも会わないでは>死ねない」 みんな賛成する。 今ではもう湖全体が見わたせる。 ふりかえれば屈斜路湖と阿寒の峰々が見える。 つきせぬ思いをカメラにおさめ、再び第一展望台に歩を進める。 展望台からの眺めはわれわれにとってはもう平凡なものだ。 だた木の間がくれに見える湖の色だけはここでも美しかった。 12時前、。湖のほとりまで一気におりる。 小リスが足元を横切る。 透明度世界一の水はつめたい。 四人とも顔をつけて水をのみ、摩周湖の水で顔を洗うと美男になるとみんな一人ガテンしている。 しばらく休んで、カルデラ湖の内壁を登るが、<水島の早かったこと、早かったこと。 あの男、目的さえあればいつでもどこでもツヨイ!> バスの時間を間違えたためわずか10分の違いでのりおくれていまった。 次のバスは2時半。 みんな一度に疲れが出てしまったようだ。 歌も声にならない<2時間半待つからではない・・・>。 昼メシ用のパンをサイダーで流しこむ。 <バスに乗り遅れたことはそんなに重大だった。全く・・・> バスにのってからはみんなぐったりして窓外の景色などどうでもいいような気がする。<歴史の残る服部のものすごい居眠り> バスはいったん夕べの弟子屈に立ち寄って阿寒湖へ。 途中、 <双岳台までは知らないだろう>双岳台から雌阿寒、雄阿寒よりそう姿、双湖台からペンケトー、パンケトーの湖が原始林の間に見える。 5時15分終点阿寒湖畔でおりて、番頭の呼び声をかきわけかきわけ営林署事務所へ行く。 出てきた若奥さんに我々の来意をつげると、しばらく思案の上、営林署宿舎にデンワしてくれ、幸い一部屋だけあいていて二食付き520円で今晩のお宿が確定した。 宿舎といっても雄岳荘と名のつくれっきとした旅館。 新築で気持ちがいい。 すぐに入浴。 大きな湯船に水(お湯)が満々。 手足をのばす。 それでも満足できない輩は河馬のように鼻だけ出して泳いでいる。 風呂から上がって食事。 トンカツだ。 フォークとナイフがついている。 ポタージュは味噌汁。 一服してから<ハットリがニヤニヤしながら>マリモ荘にデンワをかけ、例の女の子達にデイトを申し込むが、マリモ荘はユースホステルとして規則がきびしく夜遊びはできないとのこと。 しかたなく<まりも荘付近をうろついてから>四人だけでボッケに行く。 泥沼の中から間けつ的に蒸気が噴出している。 帰り道、はでに並んだみやげ物ヤをウィンドショッピングする。 <明日のデイトのため>ポマードを買う。 かなりの人ごみだがきょうはそれでもすいているという。 阿寒もやっぱり山に登らなくてはつまらない。 宿に帰って作戦会議。 眠くて計画が進まない。 結局、一番安あがりの方法をとる。 ○名句 : 朝顔の外にかけるな如露の水(川湯駅Toilet) ○忘れ物 : 升谷の水筒。 摩周湖の水ごと誰かに提供 ○寸評 : 北海道に来てこんなに晴れたのは初めてだ。 おかげで升谷の水筒一つで摩周湖の全ぼうを見ることができた<感謝しろよ>。 みんな口には出さないけれど当番の僕に感謝していることだろう。 |