旅日記-わが青春の1ページその2 北海道一周 第4日  支笏湖  


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1960年(昭和35年)7月28日(木)       曇 くもり クモリ    hat
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 このところ連日早起き。 きょうも準急エルムに乗るために一生懸命目をさます。 夕べ升谷だけ別のヤネの下にねたのでフトンの中でブツブツいうのが少ない。 いそいでメシを食っていると升谷が窓の下から首を長くして呼びに来た。
 8時4分室蘭発。 煙の町よさらば。 ばい煙よさらば。 煙が多くてもやっぱりここは北海道の一部に違いはない。 列車はエチケット・モデル列車。 車内売店の女の子にジュースの箱をイヤッというほど<Why?>ぶっつけられて水島、君子のごとく曰く、「いえ、結構です」。 女性に甘い。 一時間ほど右手に海、左手に草原を見て、エルムは走る。 牧場の建物のけいしゃが二段になっている屋根が何となく平和な感じを与える。 白塗りのサクも印象的。 
 9時10分苫小牧着。 紙の町苫小牧。 日本の新聞紙の大部分がここで作られている、とはいっても漁もなく、農産物もとれず、貧しきが故にパルプ生産をするようになったとか。 駅前の交通公社に入って、きょうの作戦をねる。 バスは支笏湖畔とモーラップキャンプ場に行く。 予定ではモーラップキャンプ場での泊まりだが、三人用のテントに四人が寝るのでは、どうしても一番体積の大きいヤツに露天でおやすみ願わねばならない。 それに湖畔のユースホステルにはきのうの昭和新山の女子学生が泊まることになっている。 湖畔とキャンプ場とはバスで45分もかかる。 こんなこと<理由はonly one>が潜在意識より以上にはっきりと宿泊地選定の条件に加わっている。 四人の額を集めて熟考すること1分32秒。 一人の反主流派も出ずに湖畔のユースホステルに行って見ることにする。
 駅前からバスで約50分草原を走る。 明るいけれど夏の暑さは感じない。 バスのガイドが「クシャミ一回クマ三頭」の話をしてくれる。 降りるとき例によって切符をねだったが、とり上げられてしまった。 くやしいので10円区間の切符を買いに行く。 車掌より運ちゃんの方が話がわかり、パンチをいれた切符をただでくれる。 大原はこのときすばやく小児用のもひったくってとっちゃった。<事実を書きましょう。→渡してもらった。> 
 ユースホステルに行って今晩の泊まりを交渉してみる。 予約をしていないし、ホステルの会員でもないので立場は悪かったけれど、リュックサックをしょっていたのでとめてくれることになった。 料金もホステル並にしてくれるそうだ。
 森の中にたつ赤いヤネの建物----このホステルは七月1日に開館したばかりのユースホステル専用のものだ。 テントよりずっと楽にくらせそうだ。宿が決まったので、腹ごしらえ。 久しぶり。 北海道にきて初めてのラーメンを食べる。 一人分60円也。 ホステルで大原が犬なで声を出して手なずけた犬がここまでついて来る。 相手が犬とはいえこれほどしたわれると大原も気をよくして<乏しい>ポケットマネーでパンを買って与えている。 「善良なるかな人間 愚鈍なるかな犬」
 食後、湖のはずれに立っている樽前山に登ろうというが、片道2時間以上かかるというので、一度は遠慮して湖畔を散歩する。 しばし歩を進める内、ここから樽前七合目までバスが出ることを思い出し、停留所まで駆け足でひっかえす。 歩くことに一番反対した仲間もこればかりは勇んでついてきた。 乗客はわれわれを入れて七人。 原始林の中をひた走る。 七合目から支笏湖一帯が展望される。 緑の原野や、遠くは霞の中に入って果てしなくつづく。 こんなところだと熊よりキリンの方がにあう、と誰かがいっている。 点在する白樺の幹が岩壁を思わせる。 升谷のカラーフィルムが喜んでいる。 七合目からは溶岩の赤い肌が続く。 上の方は霧がかかって高さが分からない。 火山岩の淡々とした道。 傍らに高山植物が咲いている。 気の早い奴がリンドウにしてしまった。 登るにしたがって霧が濃くなって見晴しが利かなくなる。 いいかげんに登って平坦な道に出ると、「頂上だ、頂上だ」 と歓声を上げてしまう。 視界10m。 ウブ毛霧がかかって白毛が出きる。 寒いので早々に引き上げる。 後で話を聞くと、頂上はもっと右の方にあったそうだ。 帰りのバスで、運転手に植物学の講義を聞く。エゾ松は肩がいかって色が黒く、肌が荒れているという。 トド松はなで肩、色白、但し年をとるとこれも保証されない。 
 再び湖畔に戻って、ユースホステルへ。 案の定、昭和新山の女子学生が来ていた。 今晩もよろしく。<ボクが洗濯している間に他の奴は・・・。全く早い。要領がいい> 荷物を整理し、風呂に入る頃、次第に混んでくる。 しかしここで自炊するのは我等の仲間だけ。 ホステルペアレントも僕らの心がけのよさを賞賛してくれる。 このホステルでは僕らは模範生たるべし。 ナベを借りて6合の飯を炊く。 献立は山の幸、海の幸をとりまぜ、牛に鯨にサンマにウメボシ、それに森永のスープ。 例の女の子達が、うらやましがるのを尻目にホステルの
平成7年9月の樽前山
草原で食べる。 ブヨがいるけどがまんする。 食後女の子達の訪問を受け、かんぱんとみかんのカンズメでもてなす。しばらく歌をうたって湖畔を散歩。 4人の紳士に6人の淑女。 ランララン。 ここでは。 比率の関係が逆転。 いつも苦い思いをしているヤツも今晩ばかりは・・・・・<ランララン>。 9時すぎホステルに戻り食器を洗濯。 10時2分前まで<7人で>トランプをして明日ボートに乗る約束をさせられ<ボート代は払わされた>、おやすみ。

 追伸: <女の子に気をとられてすっかり忘れてました><(服部)>樽前山に登って阪大の学生の学生と知り合う。 今、富士鉄室蘭に実習中とのこと。 きょうはサボってここまで来たそうだ。 工場実習は遊べるところに行けとの教訓をうけたまわる。 毎晩麻雀で朝おきると「みんなポーっとしてまっせ。はっきりしてくるころ、会社終わりや」<ほんまにおもしろいなあ>
    平成7年9月にも支笏湖ユースホステルは健在だった

 (折角の貴重な写真は、なんとカメラの不調で多重撮影になってしまった)



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