旅日記-わが青春の1ページその2 北海道一周 第2日  北海道上陸・大沼  


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1960年(昭和35年)7月26日(火) 晴れのち曇りその後雨  ooh
                                    今日の地図

 何度目かに目を覚ましたとき明るくなっていた。 北斗は相変わらず走っていた。 青森へ、青森へ。東北の朝は緑だった。 木立のところどころに家がある。 列車の近くで老人の草を刈る姿が見える。 牛がつないである。 列車は暑い。 外のみずみずしさはガラスにさえぎられて届かない。 ひた走りに走る列車の外を時々小駅が黙視されて<列車の中でボクの座席が黙視されたごとし(ハツ)>後へ後へとんでいく。 その小駅も緑の中から飛び出して、緑の中へ消えてゆくような感じだ。 ともかく来たのだ。 夕べは皆頭の置き場にこまり、自分の足の大きさを痛感したことだろう。<どんなに大きくても大原の足より大きいものはいません><僕もそう思いました。だけどボクほどおとなしくしていた人はいませんでした(大原)> とにかく首が腰が痛い。 今朝になっても皆昨晩の見送りを感謝している。 僕の前の三人の若者は夫々の弁当を取り出して食べ始めた。<例によって大原は自分の分をいち早くたべてしまっていました。> 大きく開かれた口に白いかたまりが、緑の切片が入っていく。 この少し前盛岡駅で先輩 ISさんと別れる。 他の二人の方々の見送りも受けた。<ISさんより他の二人の方がシェーンでした> 上野駅に比べると皆なれたものである。 列車は依然ひた走りに走り続けている。 トンネルを通り、汽笛をならし、たまに鉄橋を渡り、とにかく走っている。 皆夫々朝の眠りにおちるころ列車は岩手県と青森県の県境を走っている。 両側の緑が田んぼの緑から山の緑へ変わり、相当の時間木々の間を走る。 道路が近くなり、遠くなり上になり、下になりついに海が見えるところまで来た。 浅虫温泉の付近になると海の色は美しい。 海は静かだ。 やがて青森、重いリュックを背負い、ならんで、やがて乗船。 このとき水島だけが座席指定券を渡してしまう。 残念がることしきり。 二等船室へ下りる。
 異様な臭気。 たたみ、雑居、とにかく船の底ってのは初めてだ。<サイフとナベの底は知っているけど> 皆きょとんとしている。 となりのオバサンたちの言葉、まるでわからない。 いよいよ北海道へ殆ど気付かないあいだに青森を、本州をはなれていた。 とにかく暑い。 付近の人の動きにつれて皆上に出る。 となりのオジサンの手。 かさかさしてくろくって太く強そう。 これは北海道の手なのだろうか。 時間は十時ちょっと過ぎ。 海は静かだ。 風は涼しい。 どこからかカモメが一羽ついて来る。 船の煙が海を暗くする以外とにかく船以外の何もない海。 カモメは羽を休めていた。 皆この辺で見送りの礼状を書くこととする。 相手の決め方。 年令順。 名文、礼儀正しい文、迷文いろいろの文の次に又いろいろな文をつけ加える。 歌を歌う ”帰れ帰れもう一度・・・・・”と。 その後空腹をうったえるもの四人あり、2人食堂にテイサツに行く。 量の少ないカレーライスが80円。 やめることにする。
 やがて北海道の入り口函館、汽車まりも号満員。 ホームで30円のソバ。 急いで食べて昼食終わり。 軍川着。 何もないところ。 大沼まで徒歩十五分。 旅館2軒、”500円ではどうも”。 (実は4人で2000円と言ったのだが) その旅館の人の紹介で3軒目の旅館にいろいろ(注1)の後落着く。 大沼は曇っていて静かで涼しい。 静かさの向こうに小さな島がある。 とにかくこんなきれいなところがこんなに静かなのは北海道ならではだろう。
 夜はトランプを六人でやる。(注2) 結果は明日の当番が書くだろう。
 北海道はブームで混んでいるのだそうだが、やはり静かだ。<音を出すのは水島と大原だけ>
   (注1) 2軒目のオジサンに紹介してもらった旅館は満員になることになっていた。 予約の客が来るかどうかを待って宿泊が決まることになる。 列車の到着を待つあいだ旅館(旭屋)、大沼間を往復すること2回
   (注2) 六人というのは4人+2人。 2人というのは旅館と何か関係のある女子高生二人。とても美しいかわいいと言う人も いる。 その美しさのためだろうが、”トランプをやりませんか”と誘うことしきり。 しかし、美しさよりは”純情さ”の方が強く感じられる女たちではあった。<みんな社交家だ><大原は足をたたかれた><怒られたわけではない>
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