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                      1番線のスズメ

 
 2番線ホームからの7時03分発東京方面千葉行きは、久里浜で一泊した車両が車庫から出てきて今日の初仕事となる。 しかし、その次の7時16分発はちょうど7時ころに反対側の1番線ホームに入ってくる大船、鎌倉方面からの電車の折り返し運転である。
  横須賀線電車の東京寄り前3両だけは、今では少なくなったボックスシートの車両である。 いつもその車両に乗る。 ただしボックスシートではなく、ドアのそばのロングシート、といっても二人がけだが、そこに席を取る。 その理由はいずれ話したい。
  03分発が出て行くころ、16分発の乗客はまだまばらである。 あるとき、この16分発に乗り、開いているドアとは反対側の席に腰をおろして一息ついたあるときである。 ドアからスズメが一羽、チョンと入ってきた。 チョンと入ってキョロキョロと見まわして、さらに奥にチョンチョン。 人間が数人しかいないことを確認したようで、さらに奥に入ってボックスシートの下の床をつついている。 しばらくすると、入ってきたドアに戻って、プラットホームにチョンと出る。 すると、今度は隣のドアからまた入って同じことをしている。 どうせなら、いちいち元のドアに戻らずに車内を移動して行けば早いと思うのだが。
  そのころ、普段は強気のカラスたちはスズメの動きを横目で見ながら線路上をうろうろしている
  次の機会にさらに観察すると、スズメはドアを次々に移動して、ついには隣の車両に移動して行く。 行動は1羽ずつだが、同じことを数羽のスズメがしているようだ。 早朝の電車に乗った朝練の高校生たちがこぼしたパンくずだろうか、目立つゴミがあるわけではないが、おいしい餌がボックスシートの下にあるようだ。 こんな場所を自分で見つけたのだろうか、それとも仲間に教わったのだろうか。 出勤時間を間違えたスズメは、チョンとドアから入ってみると、人間の足がすでに沢山ならんでいるのに驚いてあわてて退却ということになる。  たまたま回送車だったりしてドアが閉まってしまったらどうするのだろう、と心配もしたが、久里浜駅で車庫に入るのは夜遅くだけだから、朝型のスズメにはそんな危険に出会わうことはないのだろう。  早朝のラッシュの間隙を縫うちょっとした知恵のようだ。 常連の遠距離通勤客も最近気づき始めて、スズメ達を驚かせないように静かにしている。 最近は人間の脚元のかなり近くまでくるようになったような気もする。 
  こんな経験をしてスズメに注目するようになった先日、横須賀港を目の前にする芝生で弁当を広げていたら、スズメが寄ってきてえさを待っている。 ロンドンのスズメのように手からえさをついばむほどではないが、1メートルか1.5メートルほどのところまで近寄ってきた。 ハトたちはその周りをうろついて様子をうかがっている。 あわよくば、と思っているのが見え見えだ。
  最近、どうもスズメ以外の野鳥が増えように思う。 我が家の庭でも、冬場にはスズメよりメジロの方が多いのではと思うほどにぎやかである。 つい2,3日前には庭にやってきたウグイスを、スズメが数羽がかりでしつこく追い出しにかかっていた。 スズメは、増えてきた他の野鳥に勢力を奪われて必死になっているのかもしれない。 実際、スズメが減ったという話題も時々出る。 ヒナがカラスやトンビの攻撃を受けていることが原因だろうか、と話がそんなところに落ちつくのだが。
 がんばれ、スズメたち。

            
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